2014年3月25日火曜日

美越克己校長先生 退任式 あいさつ

退任式での美越校長先生のあいさつです。
 
【 動画:美越克己校長先生あいさつ 】


 【 美越克己校長先生のあいさつ 】

 本日は、年度末の大変お忙しい中、このような会を開催していただき、誠にありがとうございます。さらには、皆さんから温かい励ましのお言葉をいただき感無量です。
 思い起こしますと、この37年間というのは長くも短い道であり、一気に駆け足で走り抜けてように感じています。 

 私は、牛田中学校では教諭11年、校長2年の計13年間お世話になりました。県内でも有数の牛田中学校で、生徒の皆さんと一緒に有意義な教師生活を過ごせたこと、大変嬉しく、さらには誇りに思っています。

 さて、生徒の皆さん。体育館前に掲げてある「思道」という字を見てください。

 牛田中学校が開校した昭和37年11月、体育館が完成し、「思道館」と命名されました。この書は当時の文部大臣である灘尾弘吉さん直筆によるものです。

 「思道」という意味をインターネット等で調べてみましたが、よくわかりませんでした。そこで、「道」について調べてみました。

 道徳、剣道、柔道、茶道などに「道」という字が用いられています。

 「道」は首と之(しんにゅう)で構成されています。

 「首」は頭を表し、自らの考えを持つこと。

 「之」は足を表し、自らが動くこと。

 すなわち「道」とは、与えられたものではなく、自ら考えて自ら動くことの大切さを表しているのです。

 私は、教師という「道」を歩んで、本当に良かったと思っています。 様々な経験をさせていただきましたが、楽しいことばかりではありません。目の前にいる子供達と心を通わすことができず、「どうしたらいいんだろう?」と夜な夜な悩んだこともありました。

 しかし、そんな悩みも、子供達の「先生、ありがとう」の言葉で、いつも癒されていました。

 20代、30代の時は、若さに任せて、強引に自分のペースで生徒を指導したことも多くあったと思います。しかし、40歳の時に、縁があって平田校長先生と広島市教育委員会で机を並べて一緒に仕事をさせていただきました。その期間、沢山のことを学びましたが、印章的な言葉があります。

 「悪い子供」はいないということです。「悪いことをする子供」はいるかもしれないが、「悪い子供」はいないということです。「子供にはそれぞれ優れているところがあり、その優れているところを見つけて伸ばさせるのが教師の務めだ」ということを学びました。それ以来、基本的な教育理念として私自身だけでなく、先生方にも言い続けています。

 牛田中学校ではありませんが、私が3年生の担任をしていた時のことです。1・2年の時から欠席がちな女の子、Aさんがいました。私は、何とかAさんの心を開き、1日でも多く登校できるようにと思い、夕方、家庭訪問を続け、保護者の方にもお会いしました。しかし、一向にAさんとは笑顔で話をすることができませんでした。

 いよいよ卒業式を迎えました。Aさんにも卒業証書
を渡すことができましたが、Aさんが帰り際にこういいました。「あんたが家に来るたびに私はお父ちゃんに叩かれたんじゃけえね!」私は、良かれと思ってし
ていたことが、Aさんを苦しめていたことを初めて知りましたが、Aさんは卒業してしまい、それ以来、音信不通となり、ずっと心配が続いていました。

 ところが、ちょうど一年前、あるところでAさんとバッタリ出会いました。結婚しておられ、息子さんと一緒でした。めでたく、第一希望の高校に合格されたとの報告も受けました。嬉しかったのは、「先生、あの時は反抗ばかりしてごめんなさい。」という言葉でした。30年以上のモヤモヤが一気に晴れました。教師という「道」を歩んで、本当に良かったと思いました。

 生徒の皆さん、これからあなた達はどのような「道」を歩みますか?
自分の頭で考え、自分で行動してその「道」を歩んでください。しかし、この先、その道に大きくはだかる壁にも出会うでしょう。その時、「その壁を乗り越えてください」とよく言われますが、とんでもなく大きな壁があったらどうしたらいいでしょうか?その時は、とにかくその壁の周りをウロウロしてください。その壁から逃げ出さないでください。逃げずにウロウロしていたら、もしかすると何かいいことがあるかもしれません。今できる最大限のことを根気強く繰り返し続けていると、何かいいことがあるかもしれません。大きくたちはだかる壁にヒビが見つかり、そこを崩すことができるかもしれないし、どこからかヘリコプターが飛んできて、乗せてもらえるかもしれません。

 しかし、時には引き返して別の道を歩むことができるかもしれません。
 すべて、自分で考え、自分で行動してください。

 この「思道」という言葉を忘れないでください。

 結びに、あらためて皆様にお礼を申しあげます。

 

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